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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 頁

青空文庫

又八とそんな約束があるくらいなら、当然、この間うち大坂表で彼と会った時に、自分へ話しておくはずである。又八は武蔵の言伝てなどを受けてはいない。お杉は、その一言だけで、武蔵のことばを皆嘘と決めてかかった。

「みぐるしいぞ、武蔵、おぬしも無二斎の子であろが、死ぬ時は、潔う死ぬものと、おぬしの父親は子に教えてはおかなんだか。ことば遊びは、無用。婆が一念、神仏も御加護の刃、受けらるるものなら受けてみやい」

肱をちぢめて、武蔵の手を外すと、お杉隠居は、ふいに、

「南無っ」

と、小太刀を抜いて両手に持ち、武蔵の胸もとへ向ってまっすぐに突いてきた。

武蔵が、空を与えて、

「おばば、落着け」

平手でかろく背を打つと、

「大慈、大悲」

お杉は、躍起となって、振向きざま、ふた声三声、

「南無、かんぜおん菩薩、南無、かんぜおん菩薩ッ」

烈しい太刀を打ち振った。

その手頸をつかんで、武蔵は、外身にひき寄せ、

「おばば、後でくたびれるぞ。……サ、すぐそこじゃ、五条大橋まで、ともかく、拙者に従いて歩いて来るがよい」

捻じ取られた自分の腕の肩ごしに、お杉は、きっと白い眼を武蔵に向けた。――そして唾でも吐くように口をすぼめたと思うと、