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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
線上閱讀徳冨 蘆花《小説 不如帰(しょうせつ ほととぎす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,742 字 · 256 頁
もうそのころは知る人は知っていたが自分にはまだ初耳の「浪子」の話である。「浪さん」が肺結核で離縁された事、「武男君」は悲しんだ事、片岡中将が怒って女を引き取った事、病女のために静養室を建てた事、一生の名残に「浪さん」を連れて京阪の遊をした事、川島家からよこした葬式の生花を突っ返した事、単にこれだけが話のなかの事実であった。婦人は鼻をつまらせつつしみじみ話す。自分は床柱にもたれてぼんやりきいている。妻は頭をたれている。日はいつか暮れてしもうた。古びた田舎家の間内が薄ぐらくなって、話す人の浴衣ばかり白く見える。臨終のあわれを話して「そうお言いだったそうですってね――もうもう二度と女なんかに生まれはしない」――言いかけて婦人はとうとう嘘唏して話をきってしもうた。自分の脊髄をあるものが電のごとく走った。
婦人は間もなく健康になって、かの一夕の談を置き土産に都に帰られた。逗子の秋は寂しくなる。話の印象はいつまでも消えない。朝な夕な波は哀音を送って、蕭瑟たる秋光の浜に立てば影なき人の姿がつい眼前に現われる。かあいそうは過ぎて苦痛になった。どうにかしなければならなくなった。