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しょうせつ ほととぎす

小説 不如帰 

徳冨 蘆花

線上閱讀徳冨 蘆花《小説 不如帰(しょうせつ ほととぎす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,742 字 · 256 頁

青空文庫

四の二

「おかあさま、おそくなるわ」

千々岩はいち早く子爵夫人が手にしたる四季袋を引っとり、打ち連れて歩みつつ

「それは――何ですか、よほどお悪いので?」

「はあ、とうとう肺になりましてね」

「肺?――結核?」

「は、ひどく喀血をしましてね、それでつい先日逗子へまいりました。今日はちょっと見舞に」言いつつ千々岩が手より四季袋を受け取り「ではさようなら、すぐ帰ります、ちとお遊びにいらッしゃいよ」

華美なるカシミールのショールと紅のリボンかけし垂髪とはるかに上等室に消ゆるを目送して、歩を返す時、千々岩の唇には恐ろしき微笑を浮かべたり。

四の二

医師が見舞うたびに、あえて口にはいわねど、その症候の次第に著しくなり来るを認めつつ、術を尽くして防ぎ止めんとせしかいもなく、目には見えねど浪子の病は日に募りて、三月の初旬には、疑うべくもあらぬ肺結核の初期に入りぬ。

わが老健を鼻にかけて今世の若者の羸弱をあざけり、転地の事耳に入れざりし姑も、現在目の前に浪子の一度ならずに喀血するを見ては、さすがに驚き――伝染の恐ろしきを聞きおれば――恐れ、医師が勧むるまましかるべき看護婦を添えて浪子を相州逗子なる実家――片岡家の別墅に送りやりぬ。