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しょうせつ ほととぎす

小説 不如帰 

徳冨 蘆花

線上閱讀徳冨 蘆花《小説 不如帰(しょうせつ ほととぎす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,742 字 · 256 頁

青空文庫

「お母さま」

子爵夫人は進みて浪子の涙をぬぐいつ。浪子はその手を執り

「お母さま――御免――遊ばして」

子爵夫人の唇はふるい、物を得言わず顔打ちおおいて退きぬ。

加藤子爵夫人は泣き沈む千鶴子を励ましつつ、かわるがわる進みて浪子の手を握り、駒子も進みて姉の床ぎわにひざまずきぬ。わななく手をあげて、浪子は妹の前髪をかいなでつ。

「駒ちゃん――さよなら――」

言いかけて、苦しき息をつけば、駒子は打ち震いつつ一匕の赤酒を姉の唇に注ぎぬ。浪子は閉じたる目を開きつつ、見回して

「毅一さん――道ちゃん――は?」

二人の小児は子爵夫人の計らいとして、すでに月の初めより避暑におもむけるなり。浪子はうなずきて、ややうっとりとなりつ。

この時座末に泣き浸りたる幾は、つと身を起こして、力なくたれし浪子の手をひしと両手に握りぬ。

「ばあや――」

「お、お、お嬢様、ばあやもごいっしょに――」

泣きくずるる幾をわずかに次へ立たしたるあとは、しんとして水のごとくなりぬ。浪子は口を閉じ、目を閉じ、死の影は次第にその面をおおわんとす。中将はさらに進みて

「浪、何も言いのこす事はないか。――しっかりせい」