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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
線上閱讀徳冨 蘆花《小説 不如帰(しょうせつ ほととぎす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,742 字 · 256 頁
、常春藤の陰に立つ四阿を見て、しばし腰をおろせる時、横手のわき道に駒下駄の音して、はたと豊子と顔見合わせつ。見れば高島田、松竹梅の裾模様ある藤色縮緬の三枚襲、きらびやかなる服装せるほどますます隙のあらわれて、笑止とも自らは思わぬなるべし。その細き目をばいとど細うして、
「ここにいらっしたわ」
三十サンチ巨砲の的には立つとも、思いがけなき敵の襲来に冷やりとせし武男は、渋面作りてそこそこに兵を収めて逃げんとするを、あわてて追っかけ
「あなた」
「何です?」
「おとっさんが御案内して庭をお見せ申せってそう言いますから」
「案内? 案内はいらんです」
「だって」
「僕は一人で歩く方が勝手だ」
これほど手強く打ち払えばいかなる強敵も退散すべしと思いきや、なお懲りずまに追いすがりて
「そうお逃げなさらんでもいいわ」
武男はひたと当惑の眉をひそめぬ。そも武男とお豊の間は、その昔父が某県を知れりし時、お豊の父山木もその管下にありて常に出入したれば、子供もおりおり互いに顔合わせしが、まだ十一二の武男は常にお豊を打ちたたき泣かしては笑いしを、お豊は泣きつつなお武男にまつわりつ。年移り所変わり人長けて、武男がすでに新夫人を迎えける今日までも、お豊はなお当年の乱暴なる坊ちゃま、今は川島男爵と名乗る若者に対してはかなき恋を思えるなり。