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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁
林冲とその若き妻は、家にあっても声をひそませ、垣の物音にも、すぐ心を研ぐような習性にまでなっていた。というのも、しばしば妻の身が襲われかけたり、林冲が友人の家で酔っている間に、不慮な事件が留守中に起ったり、何度となく、謎のごとき怪に呪われていたからだった。
「……狙われているのは、私の身だけではございませぬ。私を愛してくださるなら、あなたもご自身に気をつけてくださいませ。禁軍へご出仕の行き帰りにも」
彼の妻は、林冲が門を出てゆくたびに、うるんだ眼で、良人に言った。男は出ないわけにはゆかない。林冲は笑ってみせる。
「案じるな、おれは大丈夫だよ。こう見えても、武術では豹子頭の前に立ちうるほどな敵はない」
――が、或る日、閲武坊の辻で、ひょっこり魯智深と行き会った。彼とは、あれからも数回飲みあって、いよいよ交友密なるものがあったが、
「どうしたんだ豹子頭、会うたび顔いろがよくないぜ。そろそろ秋風に枯葉は舞うし、拙僧もなんだか淋しい。ひとつそこらで飲ろうじゃないか」
と、その日も誘わるるまま、居酒屋の軒をくぐった。
花和尚と語っていると、彼は何もかも忘れえた。