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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

と彼は自身でもう一トまたぎの垣隣りへ出向いて、何か言っていたが、間もなく恐縮し抜く婆の手を曳かんばかりにして、連れ戻って来た。

「さあ、お年順だし、兄の武大や嫂が、始終ごやっかいになってきたお婆さんだ。……どうぞ姉の金蓮のわきにお坐りなすって下さい」

「二郎さんえ。あなたは県の都頭さんという偉いお方。それなのに、婆が上座になんて坐れますかいな。婆はこっちの隅で」

「まあまあ。今日だけは、そんな辞儀をおっしゃらないで。さあ姉さんも先に坐って……。それから」

と、武松は集まった近所の顔一同へ、挨拶を述べ、亡兄に代って、ねんごろに生前の誼みを謝した。

集まった銀細工師の姚次、葬具屋の趙四郎、酒屋の胡正、菓子屋の張爺さんなど、どれもこれもただ、眼をまじまじ、硬くなっているだけだ。というのも、近所合壁、西門慶と金蓮のわけあいを知らぬはなく、どうなることかと、内心、関り合いを極度に恐れていたからである。

「さあ、仏事じゃございますが、そうご窮屈になさらないで」

と、武松はみずから執り持って、杯をすすめ、しきりにくだけて見せるが、誰ひとり浮いてもこないし、酔いもしない。