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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

正業について、おふくろを大事にしろよ。こんど悪さを見つけたら命はねえぞ」

「えっ、これを。オオ大人、ご恩は一生忘れません」

「何ッてやんで。おらあ、大人なんていうお人柄じゃねえ。おう、だが一応名だけ聞いておこうぜ。てめえの名は」

「李鬼と申しますんで。へい」

「ほんとかい。苗字から名まで似ていやがる。ま、それも同郷人なら仕方がねえや」

午後の道もまだ山だった。李逵は七月の山路に歩きつかれた。酒はさめ、喉は渇く。考えてみると、前夜、朱富の店でも、酒ばかりで飯はたべていなかった。

「オヤ、小粋な女がいやがるぜ」

山の一軒家だが、酒の旗が立っている。女はざっかけ結びの髪に、草の花を挿し、李逵を見ると、その朱い唇が笑った。

「姐さん、酒はあるかい」

「おあいにくさま」

「ひどく素気ねえな。じゃあ飯を炊いてくれ。飯の菜ぐらいあるだろう」

「お客さん、待ってくれるかね」

「よかろう。一ト昼寝、涼んでいる」

小屋の横へ縁台を持ち出して、李逵はいつか蝉の声にくるまれてトロとしていた。もしこのとき、梢の栗鼠か何かが彼の顔へ胡桃の実を落さなかったら、彼の命はどうなっていたかわからない。