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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
日本丸
九鬼嘉隆の率いる水軍だった。
摂津の花隈城陥落の日、この船手勢は、思いもうけぬ海上から霧を払ってあらわれ、艨艟数十艘を浜にならべて軽舸を下ろし、たちまち川口から溯って各所へ陸戦隊を上げ、花隈から逃げ落ちて来る敵のものをことごとく首にして、信長へ献じたのである。
「船手は海上のそなえとのみ思うていたが、機に応じて、陸上の働き奇特なことである」
と、信長は、九鬼嘉隆の本高三万五千石へ、さらに七千石の加増を与えて、
「いよいよ水軍の充実に力をいたすように」
と、励ました。
織田氏の水軍は、その部門ができてから、まだわずか三年ぐらいしか経っていないのである。もとより非常に幼稚だった。
けれど、その短日月のうちに育成して来たものとしては、目ざましい発達といわなければならない。
なにしろ、ごく近年までは、信長自身すら、兵事といえばほとんど攻城野戦のこととして、海上の軍備までには思いいたる遑もなかった。
その通念を破って、彼に、
(水軍なくしては)
と、痛切に、その必要を知らしめてくれたものは、敵であった。西国の強大毛利なのである。
大坂石山本願寺の頑強な交戦力は、信長がいかに畿内の陸上から包囲しても、その交通路を遮断しても、すこしも衰えるふうがない。