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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

彼の座右には、目につく者がひとり召し呼ばれていた。堺の千宗易である。茶道衆のひとりとして、茶事があればかならず趣向を問われ、また平素にも信長の相手によく見える者ではあったが、この頃としては、その姿をここに見せたのは珍しいといえるのである。

なぜならば、大坂本願寺落去の直後に、きびしい追放を喰った佐久間右衛門父子に対するお咎めのうちに、

――陣中、茶事に耽り、風雅にうつつ抜かす事、言語道断。

なる一箇条があり、その詰問的な辞句からみると、信長は、かの仏教にたいして、苛烈な破壊をやったように、近年の茶事流行の弊風に対しても、また、極端な強圧をやり出すのではないかと、世の茶道者流はみな怖れおののいたのであった。

東山殿からの茶が武家一般に伝わって、それが公式な饗応のあとに、また、各※(二の字点、1-2-22)の家庭のうちに、さらに、陣中の交友や心養にまで用いられだして来た傾向は、もう近年ともいえないほど、また流行ともいえないほど、日常のものになりきっていたが、これに伴う趣向の数寄とか道具の贅とか、淫すればおのずからどんな道にも余弊の生じるのは同じことで、この道にも近ごろはややそういう悪風がないでもないとは、茶外の人の非難ではなく、茶道に携わっているものの口から憂いられていたことでもある。