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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
もちろんこれは忽ち数倍する兵力で包囲殲滅してしまったが、その戦闘精神の強靱なことと、士節の高い心根には、寄手の将士も舌を巻いて歎服し、死体はみな一つ一つ手厚く葬って、そこらの野辺の花など手向けられていた。
死にもの狂いな城兵の抵抗はこの程度には止まらない。
中村五郎忠滋は、別所家の侍だったが、寄手方の一将、谷大膳とは以前から多少縁故があったので、対陣のあいだにも、時折、歌など書いて示して来た。
「ははあ、さては?」
と、大膳は、彼に二心あるものと読んだ。――で、ひそかに密者を忍ばせて、
「城中から裏切して、この方の人数を手引きするなら、落城の後、羽柴様に願って、所領家名の安泰はもちろん、将来良きように取り計らうが」
と、もちかけてみた。
果たして、中村は同心して来た。けれど万々、念を入れて、谷大膳は、人質を要求した。
すると一夜、暗にまぎれて、
「これは、わが家の惣領娘、何とぞ、大事の終るまで、お手許に」
と、妙齢十六、七の眉目うるわしい処女を、そっと城中から送って来た。
「よし」
と、谷大膳は、以後、時期攻口など、万端ぬかりなく諜しあわせて、或る夜、尖兵一千余人、中村五郎の手引のもとに、三木川の対岸の崖からよじのぼり、首尾よく城壁のうちへ送りこんだ。