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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

偽和

偽和

越前はもう積雪の国だった。

雪となり出すと、明けても雪霏々、暮れても雪霏々、心を放つ窓もない。

が、北ノ庄の城廓は、この冬、いつもの年よりは、何か、あたたかいものがあった。

お市の方と、連れ子の三人の姫たちが、本丸に近い一廓に住みはじめていたせいであろう。

めったに、お市の方のすがたは見るを得ないが、三人の姫たちは、限られている局の中だけにじっとしていなかった。それに、姉の茶々が十六、中の妹が十二、末の妹が十という――木の葉が落ちてもおかしがるほどな――いわゆる乙女ざかりなので、その笑い声がたえたことがない。折には、本丸のほうまで明るく聞えてくる。

それにひかれて、勝家はよく局へ渡った。そして彼女たちの明るい中に、屈託の多い心を一時でも忘れようとした。けれど、勝家がそこへ臨むと、茶々も初姫も、末の姫も、いいあわせたように変な顔をしてしまって、ホホともケロとも、笑わなかった。

――何しに来たんでしょう。

――怖らしい小父様。

――はやく帰るとよいに。

鳩みたいな眼を見あわせて、暗にそう囁き合っているような容子だし、お市の方も、名玉の香炉のごとく、端厳として、飽くまで麗しくはあるが、冷やかに、