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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

今、亀山も陥し、国府も収めたといえ、それらは要するに地方的な端城に過ぎず、勢州攻略のことはまだ敵地を踏んだというだけのものでしかない。――この時において、越前の柴田軍が嵎を負う虎の如く、柳ヶ瀬越えの境から大挙南進して来たということは、位置勢州にある羽柴を主力として、決して軽々に方途の定められる問題ではない。

――が、秀吉は、その明示を下すに、無為な時日を移さなかった。彼が帷幕のうちから、

「すぐ陣払いを」

と命を発し、つづいて、

「北近江へ」

と、転陣の先をあきらかにしたのは、実に、報を受けたその日――夕刻から夜半までの間に、万端の手筈もすべてなし終っていたのである。

即ち、勢州方面の、爾後作戦は、これを織田信雄と蒲生氏郷の二将にゆだねて、その麾下には、関盛信、山岡景隆、長谷川秀一、多賀秀家らの部隊を残して、

「要路は断ち、城はつつみ、来れば応じ、敢えて追わず、構えて、滝川の誘いに乗って、老巧な詭計にかかるな」

と、かたく戒め、そして一切を託した上、にわかに、次の日から軍を回して、続々、土岐多良越え、大君ヶ畑などの峠路から、近江へ向い出したのであった。