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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
で、長秀は、早馬の者が、
「昨夜来の敵の様子、不審にて候う」
と聞くや、
「かくある間も心もとなし」
と、手勢わずかに千余人を兵船五、六艘に乗せて、直ちに、
「葛尾附近へ」
と、漕がせて来た。――と果たして、賤ヶ嶽方面に煙が見られ、やがて、葛尾の岸近くに来ると、旺んな銃声さえ聞えて来たのであった。
「敵は早や本山の砦を攻め陥したと見ゆるわ。賤ヶ嶽も危うい、岩崎山も恐らく持つまい。……与右衛門、三郎右、その方どもは何と見るの」
幕僚の二人は、長秀から意見を問われると、率直にこう答えた。
「まことに、事態容易とは思われませぬ。必定、敵は大軍を動かし来ったものに相違なく、今この小勢をもって、破竹の敵に向ってみたところで、到底、お味方の危急を救うには到らぬものと見られます。事態、かくの如き上は、このまま、坂本へ引っ返し、坂本城にお籠りあるが上策ではないかと思考されまする」
「愚かなことを……」
と、長秀は聞き流した。そして却って、二人へ火急に命を下した。
「早々、船を渚へつけ、兵馬を悉く、岸へ上げい。そこでまた、その方どもは、急いで船を返し、海津に駐めてある鍋丸の軍勢の三分の一を分けて、即刻、当所への加勢に駈けつけさせよ」