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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
「でも、五里の湖上を、往き返りしていては、目前の御合戦に、間にあいましょうや」
「戦に当っては、日頃の算用一切無益じゃ。――五郎左衛門長秀が、これに兵を上げたりと敵へ響けば、それで既に効はある。よもやかかる小勢とは、敵も測り得ず。必ず一面に猶予を生ずるであろう。小さい思慮分別、かなぐり捨てて、早や船を着け、海津へ急げや」
丹羽長秀の上陸した地点は、葛尾村の尾崎であった。船はすぐ引っ返した。装備に一刻余り費やされた。銃隊、槍隊、騎隊、荷駄隊など、列伍が組まれると、それはすぐ賤ヶ嶽へむかい、急流のごとく進軍し始めていた。
途上の一部落で、長秀は馬を止めた。村民の群れを見かけたので、情報を聴取するためだった。
村民たちのいうには、
「夜明け方の合戦は、不意のことで、何やらいっこう分りませんでしたが、この辺までも、流れ弾が飛んで来、程なく大岩山の方に火の手が揚ったと思うと、鬨の声が、幾度も、海嘯のように聞えて参りました。そして佐久間隊の武者が――多分、斥候隊かもしれませぬ――馬を飛ばして何度も余吾の方から村を駈け抜けて行きました。うわさには、中川瀬兵衛様の軍勢は、砦を守って、一人のこらず討死したとやらで、どうなることぞと、今も皆して語り合っていたところでございまする」