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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

何せよ、秀吉に続く数多の将士が、秀吉におくれじと、また、余人に先は譲らじと、鋭気を競い、先を争うて急ぐこと、戦国の日、諸所に大小の合戦は繰り返されたが、まだかつて今日ほど、その先争いの烈しかったことはなかった。

当時でも、抜け駈けや味方争いは、儼に軍律のゆるさないところではある。しかし、秀吉はこの日、一切の日頃の規縄を解いて、将士の意気と思いに委せたのである。それも、ことばや法文で示したものではない。――彼自身がまず先頭を切って、味方一万五千の先に一騎駈けして見せたのである。

なおまた、この日、彼が決した大方針といい、行くての主戦場といい、指揮一切は、帷中の短時間に、ばたばたと裁決したことなので、その要綱を知悉していた者は、まったく首脳部だけで、大衆一万五千の兵は、ただ木之本へ木之本への合言葉と、

「軍は勝ちだと、御大将がいっている」

という以外に、何のためにかく急がれているのか、仔細は何もわからずに走っていたのがほとんどといってよい。

けれどただ、兵すべては、

「御大将が、急ぐからには――」

と、信念信頼の一点を、先頭の姿に託して、

「死ぬも定、生きるも定。