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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
何とよい機に、岩間三太夫とやらが、滝川を否応なく、筑前の一撃下に、引き出しておくれたではあるまいか」
そして、笑い出しつつ、その苦笑の下に、
「滝川とて、うつけじゃない。おそらく一益、あの禿げ上がった額をたたいて、ちと早かったと、臍を噛んでおるにちがいないわさ」
と、いった。
勿論、彼の肚は疾くにきまっていたが、伊勢経略の意表を、衆座の中で言明したのは、この日この時で初めてであった。
彼の口吻から見ても、岩間三太夫の無謀の挙を、彼がいかに天恵の機会とひそかに慶していたかが察せられる。
が、彼は決して、事を急ぐがために、順を過るような愚はしない。入っては朝を拝し、出でては三法師に謁し、なお評議の必要とてないが、ここに衆将を会して、その名分をいやが上にも明らかにしてかかった。
檄はここから発せられた。
領国の輩はもとより、友邦の諸将にも広く伝え、共にその正大の兵を安土に集合せんことを求めた。
あわれむべき盲策の持主。それは北ノ庄の雪深きところに、麗人お市御料人を室に迎え、
(――陽春、雪解けの時来らば)
と、むなしく自然を恃んでいた柴田修理勝家にほかならない。