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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
二
単に酒の価が以前は安かったから、多く飲んだという経済的な理由だけでなく、一般に酒の毒は昔の方が急劇であったのかも知れぬ。中世の記録を見ると、公けの御宴会でも淵酔とか沈酔とか謂って、多くは正体がなくなり、またこのような失敗を演ずる者が、いくらもあったように記してある。高くもなったけれども酒の質が、今は前代とは比べものにならぬほどよくなったのである。その上に味もよくなり、色もいよいよ美しくなって、幸か不幸か嗜好品としての資格を、だんだんと具備するようになってきたのである。
二
酒を飲む機会の昔と比べて、非常に多くなってきたのも、一つはその結果と言ってよいのである。いつでも飲みたいという人が沢山に出てこなければ、造り酒屋は商売として成り立つはずもなく、また又六などと呼ばれる取売店が、繁昌するようにはならなかったわけでもある。尤も近年の罎詰小売法が考案せられてから、急に僻村でも酒が手に入りやすくなり、従って酒を飲む癖を普及させたことは争われないが、是とても時を構わずに飲むという慣習が、すでに公認せられていたからできたことで、少なくとも第二次の新たな原因というに過ぎない。