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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

二

方々の田舎にあって、それを制止した法令なども残っている。しかしそういう日に撫子を飾りにすることも空想なれば、次の句の弁慶の宮とても実在ではない。もしもそんな宮があったら鼓を打って手向けるだろうくらいなところで、この一聯の句はできたのであった。それをじみちの方へ引戻そうとして、寅の日の一句は附けられたものと思うが、なお興味はそぞろいて次の「南京の地」という句になったのである。爺の独活苅なども原因は是とよく似ている。一方に弥生の節供の鶏合せのかわりに、鸚鵡を出されたというような思い切った趣向ができると、是に立向うためにはどうしてもまた一段と頓狂な空想が、浮んで来ずにはおられなかったので、それを静かに観て引締める者がなかったのが、すなわち談林一流の花火のような結末であったろうと私は思う。

二

絵などの発達の経路も或る点までは是とほぼ併行している。当初稚なくしてまた上品な貞門の俳諧を突破して、梅翁一派の豪胆なる悪謔が進出した際には、誰しも鳥羽僧正の画巻をくりひろげるような痛快さをもって、悦び迎えざる者は無かったのであろうが、しかも百鬼夜行の路は行き究まる処があった。