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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
それで今日のごとく新文化の普及した時代になっても、その方々の異なる生活状態を寄せ比べて見ると、変遷の各段階が現われてくるのである。たとえばわが家では親がいるうちだけで止めた行事を、隣村の親類では今でもまだ続けている。もう少し奥の田舎に行けば、うちの年寄の話だけに聴いているような食べ物なり着物なりが、現に今も用いられているという場合も多く、さらにその比較をなお一段と弘く進めてみると、日本人の生活ぶりの次々に改まってきた道筋が、かなりはっきりと跡づけられて、変化は決して明治大正の代に入って、突如として始まったものでないことがわかるのである。
それを一つ一つ述べ立てることは、時間潰しであり、まためいめい自分で知られる方がよいのだが、大体に日本人の食物などは、近世に入ってから追々と柔かくなり、甘くなり、且つ温かくて汁気の多いものになってきている。この四つの変革が、胃腸の働きやまた歯の健康の上に、何らの影響を及ぼさずにいたとは思われない。その中でも歯医者は近世になって始めて現われ、金歯がきらきらと光り出したのは、ほんの二十年三十年来の現象であるが、それ以前ははたして盛りの男女まで、みんな歯抜けでぱくぱくしていたかというとそうでない。