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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
「ケにもハレにも」という成句自身も、折々これを用いる老人などは有るが、すでに間違えてしまって、「テンもハリヤも」などと謂っている土地は少なくない。そうして我々の常用の褻衣には、晴衣の古くなったのをそのまま用いるようになってしまった。是に比べると食物にはなお事実上の差異が少しは遺っている。我々は改まった節には晴の膳に坐り、常の日には今でも褻の飯を食っているのである。すなわち眼前の事実を観測して、その中から年久しい慣習の跡を覓めることができるのである。
都会では今や宴会のほとんと全部が家の外の食事、もしくは主人一人の食事となって、これより他には晴の食事をする場合が無くなった。家々の家族は毎日のように、東京でいわゆる御惣菜ばかりで御飯を食べている。これに反して田舎では、正月と盆は申すに及ばず、大小の祭礼や休みの日には、カハリモノと称して通例でない食物を給与せられる。常の日の食物が思い切って平凡であるだけに、家族一同婦人小児までが、これに参与することを楽しみにしている。すなわち今でも改まった晴の食事の機会は多いのである。節供は本来はこの食事を意味する語であった。