輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
九ノ二
それだけでも、彼にとっては、この上もない愉悦だのに、見よ! 遙か眼下にどろんと澱んだ山。銀蛇のようにくねくねした流れ。森はひょろひょろと蹌踉きながら後ずさりし、膿盆のような海は時々妬まし気な視線をギラリと投かける。やがて、けちくさい斑らな芥と化した地球は、だんだんに遠ざかって行く――。
黒吉は、すっかり有頂天になっていた。
(こりゃ思ったよりずっとずっと素敵なもんだぞ)
(俺はこの風景をクルクル廻しながら飛下りるんだ)
(その黙りこくった世界には、又思い切った饒舌な「夢」があるに違いない……)
そう思うと、今直ぐにも飛下りたい衝動に駆られ、思わず戸を握りしめて機体を乗出し、幾度となく、遙か下界を覗き見るのだった。
九ノ二
「どうでしたの……」
この研究所から受けるわずかばかりの手当で、ともかくも、黒吉はその日には困らなかった。由子は、この小さな町に、たった一軒あるカフェの女給に住込んだ。
そして通勤するほど「もらい」のないそのカフェ・金鳥の、主人の眼を偸んでは黒吉のごろごろしている荒物屋の二階にしばしば訪ねて来るのだった。
「どうでしたの……」
「うん、すごいぜ、由っちゃん」