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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
というのは、そのすくすくと伸びた栗の木の枝には、なんと五寸釘のような棘をもったお祭り提灯のような巨大な毬が、枝も撓に成っているのである。中にはすでに口を開けて、炭団のように大きな栗の実が、いまにも澪れ落ちそうに覗いてさえいるのだ。いや、それだけならばまだいい。
その少しさきにある柿の木などは、これこそ見馴ぬせいか見事を通り越して、気味が悪いというか何んというか、大きなフットボールのような柿の実が、陽射しを受けて艶々しく枝も折れんばかりに成っているのである。――とても信じられぬ有様だった。
大村にしても英二にしても、もし独りでここに来たのだったら、到底信じなかったに違いない、見間違いとして、却って自分の眼の方を疑ったに相違ないのである。またそうだったら、あとからも他人にこんな話をする気にもなれなかったであろう。――誰だってこんな途方もない栗や柿の話など、バカバカしいばかりで、とても信じてはくれそうもないからである。
だがしかし、今は二人だった。二人の四つの眼で、たしかにそれを見ているのである。
大村と英二は、一寸顔を見合せてから、急にすたすたたと歩き出した。