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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
六ノ二
葉子が、自分から遠ざかる原因が、何んであるか、それが解らないだけに、なお結果が恐ろしかった。
(よし、葉ちゃんに聴いてみよう。悪いとこがあれば、直せばいいんだ)
黒吉は、急いで舞台を覗いてみた。
恰度、葉子は出番で、盛上ったような観客の前に、白蛇のように自由に肢体をくねらせている彼女の姿が、艶々と光って見えた。
六ノ二
空気が、ざわざわと拍手に乱されると、直ぐ葉子が、心持顔を、上気させて、楽屋に帰って来た。
「葉ちゃん、一寸……」
黒吉は、小さく手を振って、呼止めた。
「なアに、用?」
「うん、ほんの少し」
「じゃ一寸よ。又、直ぐ出なけりゃならないから……」
葉子は、興味なさそうに、先っき黒吉の掛けていた衣裳箱に、腰を下した。
彼女の肉襦袢の、腰の辺につけられた銀モールの刺繍が、トゲトゲと、黒吉の眼に沁み込んで、顫えていた。
黒吉は、口を听こうとする度に、心臓が、どきどきと咽喉元に押上って来て、妨げられた。
「何さ、一体……呼んでおいてサ」
「葉ちゃん……葉ちゃんは、やっぱり上手いね」
黒吉は、考えてもいない言葉が、急に口から転げ出て、ハッとした。顔がカーッとほてったようだ。