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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁

青空文庫

もう一つには、ここで彼女にそれだけの奇特を示させて置けば、かの采女の問題もやすやす解決して、頼長でも信西でももう故障をいう余地はない。玉藻も立ちどころに殿上に召されて、やがては予定の通りに頼長や信西の一派を蹴落とすことも出来る。こう思うと、忠通の弱った魂はよみがえったように活気づいて、彼は俄に起き直った。

「おお、殊勝な願いじゃ。忠通が許す。早くその祈祷をはじめい」

「では、一七日のあいだ身を浄めまして、加茂の河原に壇を築かせ、雨乞いの祈祷を試みまする」

玉藻が雨乞いの祈祷は関白家から触れ出された。その式はなるべく壮厳を旨として、堂上堂下の者どもすべて参列せよとのことであった。雑人どもの争擾を防ぐために、衛府の侍は申すにおよばず、源平の武士もことごとく河原をいましめと言い渡された。その日は八月八日と定められた。

「ほう、さりとは不思議。あたかも七十日の満願の当日じゃ」と、泰親はうなずいた。

彼はすぐに信西入道のもとへ使いを走らせて、自分たちも当日は河原へ出て祈りたいと言った。眼のあたりに魔性の者を祈り伏せるには、願うてもなき好機会であると彼は思った。

信西も同意であった。