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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁
それからそれへと一ほども猟りつくして、二人はがっかりしてしまった。気がついて振り返ると、どこをどう歩いたか、二人は山科郷のうちの小野という所に迷って来ていた。ここは小野小町の旧蹟だと伝えられて、小町の水という清水が湧いていた。二人はその冷たい清水をすくって、息もつかずに続けて飲んだ。
「千枝まよ。夜が更けた。もう戻ろう。しょせん今夜のことには行くまい」と、翁は寒そうに肩をすくめながら言った。
「じゃが、もう少し探してみたい。爺さま、ここらに狐の穴はないか」
「はて、執念い和郎じゃ。そうよのう」
少し考えていたが、翁は口のまわりを拭きながらうなずいた。
「おお、ある、ある。なんでもこの小町の水から西の方に、大きい杉の木の繁った森があって、そこにも狐が棲んでいるという噂じゃ。しかし迂闊にそこへ案内はならぬ。はて、なぜというて、その森の奥には、百年千年の遠い昔に、いずこの誰を埋めたとも知れぬ大きい古塚がある。その塚のぬしが祟りをなすと言い伝えて、誰も近寄ったものがないのじゃ」
「そりゃ塚のぬしが祟るのでのうて、狐が禍いをなすのであろう」と、千枝松は言った。
「どちらにしても、祟りがあると聞いてはおそろしいぞ」