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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

にわかに憤りの声となった。

「何故城門を閉じたんだ! 何故あいつらだけ健康なのだ!」

また咽ぶような啜り泣きとなった。

その泣き声は長く続いた。

一本の細い蒼白い棒が、天鵞絨を張ったような夜の闇を、一筋どこまでも延びて行くように、その泣き声は延びて行った。

「寒いよう」

と子供が云った。

桜の花の季節であった。しかし甲府は寒かった。四方山に囲まれていた。いわゆる甲府の盆地であった。山々には雪が残っていた。夏暑く冬寒かった。三更を過ごした深夜であった。地面から湿気が立ち上っていた。

と、足音が近付いて来た。

啜り泣きの声が急に止んだ。

「おい誰だ? そこへ来たのは?」

すると足音がすぐ止まった。

「そういうお前は何者だ?」

足音の主が訊き返した。

「病人だよ、病人だよ」

「ああそうか、俺も病人だ」

で、足音は近付いて来た。

二

「仲間にしてくれ、俺は寂しい」

新来の病人は蹲ったらしい。

「ああいいとも、一緒にいよう」

これで話は絶えてしまった。

誰の姿も解らなかった。

溜息ばかりが闇に散った。

突然女の悲鳴がした。長坂屋敷の方角からであった。若い女が犯されたらしい。