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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

三合目辺で陶器を焼きながら稼ぎをする……などということも聞いていた。わけても恐ろしいはその笑いで、中間性の陰々たる笑いが一度彼の口から出るや、相手の者は男女を問わずきっとやられるということなども、庄三郎は聞いていた。

ある日のこと、信玄公が「噂によれば北条内記、三合目陶器師と名を偽り裾野に住むということであるが、まことに人物経済上惜しみても余りある事ではある。とは云えきゃつは血吸鬼、剣に淫する一種の狂人、扶持することは出来難い」と嘆息したのを聞いたこともある。

「評判に違わぬ無双の手練、今投げた鉄槌の凄じさは何んと云ったらよかろうか。……きゃつの笑いの恐ろしさを噂に聞いていたればこそ、危く避けは避けたものの、そうでなかったらこの胴体二つに千切れたことであろう」

怖気を揮う心持ち! 庄三郎は相手の様子を油断なくとっくりと窺った。

陶器師は眼をつむり寂然として控えている。零れ陽が一筋黄金色に肩の上に斑点を印し、白い蝶がさっきからそこへ止まって動こうともせず、時々顫わせる薄い羽根から白い粉が仄かに四方へ散る。パチパチと時々音のするのは、竈で刎ねる薪であろう。