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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

「鳥刺は俺だ。何か用かな?」

「アッハハハハこれは現金! いや面白い鳥刺殿だ。……何んと鳥は捕れましたかな?」

「捕ろうと思えばいくらも捕れる。ここらの鳥は馬鹿だからな」

「で、沢山捕れましたかな?」

「ところが一羽も捕らないのさ。捕った端から逃がしてやったのさ」

「それでは商売になりますまいが?」

「俺の商売は他にある」

「ははあ、さようでございますかな!」

「人を発見けるのが俺の本職だ」

「どなたを発見けておられますな?」

「俺にとっちゃ従兄にあたる……」

「やはり身分は鳥刺殿で?」

「違う!」

と甚太郎は横を向いた。「こう見えてもこの俺だって根からの鳥刺じゃねえんだぜ」

「それはさようでございましょうとも」

「俺の従兄は侍だ」

「お侍様でございますかな」

「年は二十歳、好男子だ」

「それは好男子でございましょうとも」

「この本栖湖へ来た筈だ」

「ははあ、本栖湖へ? この本柄湖へ?」

「どうだ、お前達逢わなかったかな?」

三人の船頭は顔を集め何やらヒソヒソ話し出した。しんと四辺は静かである。

「ああいい天気だ。秋に違えねえ」

眼を細め眉を垂れ、甚太郎は無念無想、ぼんやり湖面を眺めやった。