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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「ははは。僧正はお声が高いの。そのお声でひとつ、つつみなく何事も申し立てて欲しいぞ」
左将監は、揶揄した。人を食った坊主には、食われぬ態度を必要としたのであろう。
「なんでも問え。いやなことは答えん。答えていいことは答えてやる」
「御僧。生国は」
「播磨」
「親は」
「弥陀如来」
「…………」
あきらかに、左将監の眉は、憎しみをもった。だが、末梢の些事や感情に引ッかかるまいとしてか。
「御修行、また以後の道は」
と、ぐいぐい先へ訊問を進めて行った。
文観は、一気に述べたてた。
「幼少、播州の法華寺に習び、中頃は賀西の北条寺や書写山にも数年いて、修行を積んだ。また、いくばくもなく、南都に遊び洛内に住し、いつか東寺の長者、醍醐の座主にまで補せられて、四曼三密の棟梁と、人もゆるし、みずからも持すこの文観。……いまにみよ、汝ら、この仏罰を思い知るぞ」
「みかどに近づきまいらせたのは、いつ頃からか」
「よう覚えぬが、はや十年のむかしとなろう。法勝寺行幸の折、恵鎮和尚に伴われて、御謁を賜うたのが、そもそもの初め」
「いらい宮中に出入し、ついには五壇ノ法を構え、中宮御懐妊の祈祷とみせて、関東調伏の祈りをなしたに相違あるまい」