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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

「あなたどうかなさいまして? 今日はちっとも浮き浮きなさいませんのね」

と心配そうに訊いた。

「ええ、――いいえ、別に……」

「また大九郎の奴が悪さをしたのだ」

と側から市之丞が言った。

「まあ悪いのねえあの方、何か……」

「菊枝さま、あたしもう、――」

小房は袂で面を蔽いながら、

「もう本当に、足軽の娘にでも生まれて来ればよかったと思いますわ。父が一万石の城代でなければ、たとえ稗を頂こうと粟を頂こうと、世間は黙って抛っておいてくれるはずです。なまじ父が大身であるために」

「違います、小房どのそれは違います」

市之丞は強く制した。

「あなたにも似合わぬそんな事をみだりに言うものではありません。岡野左内といえば伊達政宗侯と一騎打ちの勝負をして、政宗侯の兜へ二太刀まで斬りつけ、上杉家に岡野ありと海内に名を轟かせたほどの勇士、――世間の馬鹿者がどんな悪評をしようと、心ある者はみな推服しているのです」

左内と政宗の一騎打ちは有名な話だ。

それは慶長二年秋、上杉家と伊達とが阿武隈川の支流、松川を挟んでの合戦の折、岡野左内は偶然伊達政宗と会った。政宗はまず馬を寄せて岡野を斬った。