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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《花も刀も(はなもかたなも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 頁

青空文庫

と深喜は答えた。

「なにがやむを得なかった」

「明らかに道場やぶりに来たようでしたし、海保さんたち三人が負けたものですから、道場の名聞のためにどうしても勝たなければならなかったのです」

「私は技を使うなと云ってある」

「それは、――他流との試合だからいいと思いました」

深喜はそう答えた。

周作は黙って、ややしばらく深喜の顔をみつめ、それから嘆息するように「わからないやつだ」と云った。

「おまえには、まだわが流儀の精神がわからないのだな」

深喜は頭を垂れた。

「海保ら三人もばかだが、おまえは未熟だ、おまえは本当に三人が負けたと思うのか」と、周作は云った。

思いがけない言葉なので、深喜は顔をあげて周作を見た。周作は続けた。

「かれらが試合をしたのはばかだが、負けたのはまだしもましだ、おまえには、それさえもわかっていない」

「お待ち下さい」と深喜が反問した、「私の眼には、海保さんも、井上、稲垣さんも負けたとしか見えませんでした、勝負は紛れのない、はっきりしたものだったと思うのですが」

「それは打つ打たれるの問題だ」

「しかし勝負は」

「私は打つ打たれるを問題にしてはいない、そんなことは少しも重要ではない、面籠手をつけた竹刀の勝負など、勝っても負けてもさしたることはないし、それは剣の道の末節にすぎない」