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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《花も刀も(はなもかたなも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 頁
七
かれらは酔って上機嫌で、鼻唄などうたっていた。肩がぶつかったとき、深喜はさっと躯をひらき、反射的に刀の柄へ手がいった。
「無礼者――」という叫びが、口を衝いて出、知らぬまに手が刀を抜いた。
叫んだのも、刀を抜いたのも、殆んど無意識であり、刀が相手を斬った手ごたえで「あっ」と思った。
斬られた男と、その伴れの二人は、悲鳴をあげて逃げだした。同時に深喜もかれらとは、反対のほうへ走りだした。土堤には、かなり往来の人がいて「あの侍だ」とか「人を斬りゃアがった」とか「人殺しだ」などと叫ぶのが聞えた。
刀を持ったまま、深喜は暗いほうへ、人通りのないほうへと、けんめいに走った。
七
それは悪夢にうなされているような気持だった。
「これは夢だ、おれは夢をみているんだ」と、走りながら深喜は呟いた。
そう呟きながら「捉まったら破滅だぞ」と思い「逃げるんだ、逃げるんだ」と自分をせきたてた。
暗い街をゆき当りばったりに曲り、横丁や路地をぬけて走った。いくら走っても、うしろから人が追って来るようだし「あの侍だ」とか「あいつが人殺しだ」とか叫ぶ声が聞えるようであった。
――抜身を持ったままだぞ。