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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《花も刀も(はなもかたなも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 頁

青空文庫

この足が使えたら、そう思うと胸が沸き返るようだった。せめて声でもかけてやりたいが、声をかけて幹太郎が眼でもそらせば、相手の刀は幹太郎の胸を即座に刺しとおすだろう。その侍は(明らかに)相当な腕をもっている。あの刀さばきは凡手では不可能だ。

――平手、あせるな。

と、平八は心のなかで叫んだ。

幹太郎は微動もしない。その侍も動かなかった。およそ呼吸十五ばかり、二人は睨みあったまま機を計っていたが、突然、両者の口から叫び声があがり、幹太郎が体を沈め、侍が突きを入れた。そして幹太郎は脇へとびのき、その侍はがくんと頭を仰向けに振り、築地塀へのめりかかったが、そのままずるずると塀に凭れたまま横に倒れた。

築地塀には(突き刺さって)折れた刀が残って、冷たい光を放っていた。

遠巻きにしていた他の侍たちは、にわかにざわめきたち、倒れた侍のほうへより集まった。

「平手――」

平八は幹太郎のそばへいった。

幹太郎は稽古着の袖で、顔の汗を拭きながら振返った。彼の額はまだ蒼く肩で息をしていた。

「胸を突きやぶられた」と侍たちが云いあっていた、「着物越しに突きとおった、即死だ、あの棒で、すさまじいな」