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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁

青空文庫

「これは一体どうした事でございましょう」

おろおろする大番頭へ、

「大方の見当は付きました。曲者は逃げてしまったが、片割れは捕まりましたよ。この女を見てやって下さい」

突き出された女中のお千代は、打ち萎れた風もなく、その美しい頬に冷たい笑いをさえ浮べております。

「曲者はどうして逃げたのでしょう、親分」

取巻く人達を顧みながら、平次は床の間に登って、狆潜りの框へ足を掛けると、長押に片手を掛けて、床の間の天井の板を押してみました。思った通り、天井板は二枚ほど楽に開いて、そのうえには、真っ暗な天井裏が口を開きます。下を見ると床の間の花瓶の上には、天井から落ちたらしい埃さえ見えるのでした。

「やっぱりこれだ。燭台を倒しておいて、坊っちゃんをさらって、ここから飛出したに相違ありません。武術の心掛けがあって、身体が軽い者なら出来ない事はない――」

なるほどそう言われればそれに相違ありませんが、曲者は上から降りて来たのではなく、お千代と一緒に燭台を倒して、ここから子供をさらって逃出したとすれば、宵の内から一座の中に立ち交っていたわけですが、誰の眼にも気が付かなかったのは不思議です。