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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁
銭形平次捕物控
一
一
「親分」
「何だ、八」
「腕が鳴るね」
ガラッ八の八五郎は、小鼻をふくらませて、親分の銭形平次を仰ぎました。
初夏の陽を除け除け、とぐろを巻いた縁側から、これも所在なく吐月峰ばかり叩いている平次に、一とかど言い当てたつもりで声を掛けたのでした。
「腕の鳴る面かよ、馬鹿野郎、近頃お湿りがないから、喉が鳴るんだろう」
「違えねえ」
平掌で額をピシャリ。この二三日スランプに陥っている平次から、この痛快な馬鹿野郎を喰らわせられるのが、ガラッ八にはたまらない嬉しさの様子です。
「八、あれを聞くがいい」
「何ですえ、親分」
「誰か来たようだ、とんだ面白い仕事かも知れないよ」
「…………」
「家の前を往ったり来たりしているだろう。入ろうか入るまいか、先刻から迷っている様子だ、――女の跫音だね」
平次の言葉が終らぬうちに格子が開いて、お静が取次に出た様子、若い女の低いが弾み切った声が聞えます。やがて通されたのは、二十歳そこそこの愛くるしい娘、何やら悩みに打ちひしがれて、部屋の隅に小さく俯向きました。
色白の頬が少し痙攣して、豊かな肩が揺れると、恐る恐る顔をあげて、相対した江戸一番の御用聞――銭形平次の顔をソッと見上げるのです。