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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁

青空文庫

傍には弟の民五郎、妙にウロウロして、何事も手の付かぬ様子で平次を迎えましたが、さすがに落着きを見せるつもりか、血飛沫の中に、おののく膝を突いて、

「親分、御苦労様で」

そんな事を言っております。

平次は黙って会釈して、念入りにその辺を見廻しました。曲者は雨戸を外して入ったらしく、縁側には泥足の跡などを付けておりますが、部屋の中には別にそんなものはなく、主人の佐兵衛は熟睡しているところを、虫のように刺されたらしく、少し乗出し加減に虚空を掴んでおりますが、深々と喉笛をえぐった傷の様子では、声をも立てずに死んだ様子です。

「恐ろしい腕前だ」

平次は思わずガラッ八を振り返りました。寝ている者の首が、半分千切れるほど切るのは、非凡の業か腕力がなければなりません。

曲者の遺留品というのは、蝋塗の脇差の鞘が一本だけ。

「この鞘に見覚えはありませんか」

誰へともなく平次が言うと、

「ヘエ、そ、それは私の品で――中味は隣の部屋にあります」

待ち構えたように民五郎が言います。

次の間は深傷を負わされた新助が寝ている、納戸兼用の六畳です。

一足入ると、ここは更に惨憺たる有様です。