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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「何を驚くんだ。御用聞が往来を飛んで歩くと、世間様の方が驚くぜ」

平次は何かこう、腐り抜いていたのです。いっこう他愛もないように見えた大坪石見の屋敷の騒ぎが、その後少しも埒があかず、お関の浜路と、用人右内と睨み合ったまま、どうにもならぬ日がつづいていたのでした。

「親分、こいつは驚くぜ。荒物屋の午吉――草加から出て来て、安賭場を泳いでいる男が、土左衛門になって大川橋から揚がったんだ」

「何?」

「それね、親分だって眼の色を変えるんだもの。それを見たあっしが、大川橋からここまで駆けて来たに不思議はねエ」

「で、死骸に変りはなかったのか」

「大変り、お篠の伝で、三尺で絞められているんだ。こんどは真田紐じゃねえが、水の中でふやけているから、瓢箪のように括れていやがる。見られた図じゃあねエ」

「なんて口をきくんだ。仏様を見たら、念仏の一つも称えて来い、馬鹿」

「ヘエ」

「それっきりか」

「それっきりならお代は要らねえ。腹巻に呑んだ財布に、小判が三枚」

「たいそう持ってやがるな」

「――その上この十日ばかり、張って張って張り捲ったそうだから、三文博奕にしても、五両や十両は損っているそうですよ」