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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

三

「そんなものはあるわけはない。あったらこの私が家へ置かなかったろうよ」

決然としたものが、万兵衛の眉宇に現れます。

「坊っちゃんが亡くなると、ここの跡取りはどうなるのでしょう?」

「跡取りは養子の金次郎だ。あれは倅が生きていても、死んでしまっても、少しも変りはない」

万兵衛は「当り前の事」と言わぬばかりです。

「それは坊っちゃんが生きているうちから、皆んな知っていることでしょうね」

「五年前金次郎を養子にするとき、親類方に集まって貰って決めたことだから、皆んな知ってるはずだと思うが――」

「すると、坊っちゃんが死んでも、あんまり儲かるものはありませんね」

「人が一人死んで儲かるなんて、イヤな事だな」

万兵衛の苦々しい顔を見ると、ガラッ八も言ってはならぬ事を言ったような気になるのでした。

三

藤屋万兵衛は五十四、その内儀のお乃枝は三十二の若盛りでした。二十二も年の違うのも、世間から何とか言われるのも承知で貰った後添いで、きりょう好みや、浮気心で迎えた女房でない証拠は、女ながら万兵衛に代って内外を切って廻す腕前の見事さ、町内で誰知らぬ者もないやり手でした。

ガラッ八は一応逢ってみましたが、