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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

四

四

川波勝弥が殺されていたのは、神楽坂の裏道で、滅多に人の通らないところ。死骸を見付けたのは夜が明けてからですが、殺されたのはたぶん真夜中だろうということでした。

往来は掃き清めて、何の跡も残らず、近所で訊いても少しの手掛りもありません。

平次と八五郎は、いい加減に諦めて、肴町の道場に向いました。

「御免下さい」

平次はお勝手口から腰を低く入って行きましたが、相手はそれ以上心得て、

「銭形の親分か、さアさア入るがいい。お前が来るだろうと思って、心待ちに待っていたよ。土地の御用聞は、幽霊を縛る心算でいるんだから、手のつけようはない」

そんなことを言って迎えてくれます。二十五六の若い浪人者、これが林彦三郎というのでしょう。身体は大きいが、あまり智恵のありそうな男ではありません。

「とんだことでございましたな、――旦那は林さんとおっしゃるんで」

「そうだよ、川波氏に昨日手ひどく負けた一人だ」

そんなことを言って、彦三郎はカラカラと笑うのです。

「先生は容体が悪いそうじゃございませんか」

「それで困っているんだ。半身不自由といっても、昨夜まであんなに元気でいた人が今日はもう正体もない」