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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「年を取ってからの一人っ子で、大旦那はたいそう可愛がったそうじゃないか」

「大旦那はあんまり可愛がるから、うるさかったんでしょう」

「御新造の方は」

藤屋万兵衛の後妻で、年が二十以上も違うお乃枝というのは、御新造と言われても不思議のない若さで、一人っ子の万吉にも継しい仲だったのです。

「新造さんの方では好きでも嫌いでもなかったようです」

「坊っちゃんが死んで喜ぶのは誰だい」

「喜ぶ者なんかありゃしません」

「そんなはずはないと思うが、よく考えて御覧」

「奉公人たちは、世話が焼けなくて、少しは楽になるかも知れないけれど」

ガラッ八の問いの厳しさに対して、定吉の答えはまた、なんという無技巧なことでしょう。

「坊っちゃんが死んで得をする者はあるだろう」

「…………」

「一人っ子の坊っちゃんが死んだ後は、誰が藤屋の跡取りになるんだ」

「若旦那の金次郎さんでしょう」

なんという無造作さ、ガラッ八は「二に二を足して四」と答えられたような気がして、少しばかり拍子ぬけがしました。

「ゆうべ死骸の揚がる前に、水を呑んだのは誰と誰だい」

「大旦那とお留さんだけですよ」

「ゆうべのお菜が塩辛かったのか」