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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁
八五郎が避けたのを見ると、五十年輩の浪人者が一人、一刀を提げたまま、自分も脇腹をえぐられて、土間の床几に俯向になって死んでいるではありませんか。
「鞍掛宇八郎――」
「親分は知っていなさるんで?」
「近ごろ知ったばかりだ、――きのう銭箱を覗いた娘の父親だよ」
「えッ」
「後ろから刺すのは卑怯だが――正面から向っては討つ見込みがなかったのかな」
平次はつくづくそんな事を言うのです。
「見ていたようですね、親分」
「どれ、もう一人の方を見せてくれ」
「こっちですよ」
下ッ引の一人が指したのは、土竈の裏、問題の銭箱の蔭。水茶屋の親爺留助は、これも一刀を抜いて犇と握ったまま、右の肩先から深々と斬り下げられて死んでいたのです。
「八、土竈へは誰も手をつけないだろうな」
「親分が来なさるまで、そっとしておきましたよ」
「そいつは有難い」
死骸の側、土竈へ眼を移すと、修繕の跡と見せた右側の板――一尺に五寸ほど剥ぎ取られ、その跡には真っ黒な穴が一つ、ポッコリと口を開いているではありませんか。
手を入れてみると、
「おや?」
中から出たのは紙片が一枚。
身の丈五尺四寸五六分、中肉にて眼鼻大なる方。