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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「桜屋の下女のお照が、お狩場の四郎の娘と判ったろう」

平次の素っ破抜きは、無造作で無技巧で、なんの気取りもありませんが、それを聴いたガラッ八の驚きは大変でした。

「あッ、どうしてそれを、親分」

ヘタヘタと坐り込んで、頸筋の汗をやけに拭いております。

「八卦だよ、八」

「じょ、冗談でしょう。八卦や禁呪でそんな事が手軽に判るわけはねえ」

「ハッハッハッ、物を理詰めに考えただけの事さ。五日四晩お前が駆けずり廻るあいだ、俺は凝として自分の臍と相談をした」

「ヘエ――」

「いいかい、八、――お狩場の四郎とも言われる大泥棒が、人へ物を頼むのに、相手が鋳掛屋の小僧だにしても、四文銭三枚という法はあるまい。――外ならぬ銭形の平次へ果し状を付けるんだ、二分や一両とはずまないまでも、二朱や一分はきっと出す」

「なるほどね」

「それにあの手紙の文句は、少し巫山戯すぎていたよ。人一人殺した人間の書いた文句じゃねえ。その上妙に愚痴っぽいところがある。文句は年寄りが拵えて、書いたのは女だ」

「ヘエ――ッ」

「若くて字のうまい女が、手筋を変えて書いたのだ」

「…………」

「桜屋へ行って、お照を見たとき、俺はハッと思った。