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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「まア」

「囲いの中へ入らなかったんでしょうな」

平次もツイ、この当惑した美女のために、助け舟を出してやる気になりました。

「入れるはずもございません。幾太郎さんは大変私をにくんでおりました」

「するとこの中へ入るのは?」

「お仲と、お栄だけでございます」

「この櫛はふだんどこにおいてあるんです」

「ツイ隣の納戸の鏡台の上においてあります」

「持って歩くような事はないでしょうな」

「梳き櫛ですもの」

大きな黄楊の梳き櫛を、大家の内儀が髪に挿して歩くはずもありません。

「この家の中に御新造さんを怨んでいる者はありませんか」

「とんでもない」

お篠は脅えたように頭を振るばかりです。

最後に平次が逢ったのは、若旦那幾太郎の許嫁で、遠縁に当るという、お桃でした。三郎兵衛には恩人筋の娘とかで、三四年前に田舎から引取られ、否応言わさず幾太郎の許嫁と披露して、行儀見習かたがた、十九の厄の明けるのを待っている娘でした。大柄でそんなに醜くはありませんが、なんとなく鄙びて、若旦那の幾太郎が気に染まないというのも、決して無理ではないような気がします。

「お前の在所はどこだい」

「川越です」

「この家の住み心地はどうだ」