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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

かたがた、一ノ谷へもまわろうという狡い考えもたしかにある。おまけに、この一回も雑録随想ですましてしまったりしたが、長期の執筆にはこういう前例もないわけではない。昔の作家はままやったことだった。わざと挿話的随想へ筆をそらして、にわかに気がついたように、別行から――

閑話休題

と、本文に入ってゆくという一つの小説作法なのである。(二九・六・六)

*

鵯越え、一ノ谷の戦いは、これまでの古典や物語のすべてが、みな一方的な記述の形式で伝えられていることに気がついた。久しい間、たれもその不合理を不台理とも思わずに来たらしい。

要するに、源氏側の陣容とか戦果とか、源氏側から見たことしか書かれていないのである。

平家側は、それらの源氏の勇敢さや作戦の巧さを、華々しく引立てさせる道具立ての役割にしか使われていないのだ。古典・平家物語においてすらそうである。

もっとも、吾妻鏡や公卿日記にしても、源氏方の報告は聞かれたが、平家側の事情は分からなかったという点もあったろう。しかし平家の立場は、やはり敗者の悲哀というほかはない。“敗者に口なし”である、源氏側の好きなように記録され、伝承されたものかと思う。