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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
三上に会うと、「君、読んでるか」「読んでるさ」彼も後悔はしていなかった。しかし彼の記憶力はじつによい。私はそらんじる脳力が零に近い。「やめたらしいよ、あいつ。参ったんだぜ、吉川は。ククク」と、たれかに誇り笑いしたそうである。▼私とて、飛ばし読みにでも、読業は続けていたのだが、彼と出会えば、酒は徹宵ときまっていた。私にはその方が続かない。一度など三上から揶揄の再挑戦状まで舞い込んで来たが、参ったことにして、その後、つい約束は御破算にしてしまった。▼「北院御室御集」のうろ覚えが今なおどこかに残っていたのは、その時、三上に挑まれたお蔭だった。なつかしい友の一人ではある。
ちと旧事だが、十一月半ば、菊池寛の郷里の四国へ行った。高松市民協賛の下に氏の銅像が建ち、その除幕式に出たのである。▼胸像ならいいが、文士の銅像はちとどうか。それに、あの風貌だったしと、幕を払われるまでは、不気味だった。ところが現われ出た故人は案外スマートなので、ほっとした。▼「君イ、ぼくが知ったことじゃないよ」と、空うそぶいている姿だ。花火があがる。これからはまた、毎日、観光客にも取巻かれることだろう。