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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
南へ向かって急速度に降りてゆく。お互いは急に陽気になった。
ゲジョ山だの飛鳥だのという千山万水の数十キロを、またたくまに走破して、麓近くで「小坂村郵便局」とあるのを、ちらと見たと思うと、
「犬を見ましょうや。紀州犬ですぞ。すばらしいのが、そこの家には生まれているはずだ」
急に、トヨペットをとめて、五丈館氏も運転手氏も、降りてしまう。そして道ばたの農家の横へはいってしまった。
なるほど、何匹も飼ってある。クサリで繋いである純白、オリの中に入れてある狸みたいな茶褐。ぼくらが降りて近づくと、さかんにワンワン吠えたてる。
「これは、ええぞ。どっちかな、ええのは。ヤ、もう一匹いる」と、この運転手氏がまた犬好きらしい。ちょろと、寄って来たもう一匹の白の尻ッ尾を握って、目の高さほど持ちあげた。
飼主とみえ、人のよさそうなその家のお婆さんが出て来た。そして五丈館氏や運転手氏などの、土地者同士が顔をよせあい、いやもう、話すまいことか。まるで犬の市でも立ったように、夢中である。
「どこの犬ッ仔は、まだ持っているか」「いやあれは、大阪へ四万円で売れたがな」「ほう。うちのは共進会で賞牌をとったぞ。