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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
瀬戸火鉢の粉炭、色の出ないお茶、障子のツギ貼りの冬風、なんとも侘しい。
夜は恐くはないのかしら。訪う人も詣る檀家もなさそうだが、終戦後の寺院経営を、どうして暮らしているのだろう。老いればとにかく、年下の尼さんなど、堤へ出れば、大阪も見えるのに――などと客たちの心もヒビアカギレに沁みてくる。
「はい、はい。どうぞまあ。ただ今、奥へ持ち出しますから」と、一人は本堂の雨戸四、五枚開けに立つ。年下の尼さん、また、茶をついでくれる。そのとき、ふと、この尼さんの一分刈りほどな頭を見ると、台所の棚のカドにでも打つけたのか、ちょっと、血がにじんでいた。この屋根の下で、眼にはいった赤いものはそれだけである。
庫裡ともいえない小部屋で、寺宝を見せてもらう。数通の記録も、みな、よほど後世の伝写。どれを繰っても、史料というほどの物はない。さいごに、こことしては御本尊といってよい“遊女妙の君”の画像を観る。初期浮世絵にままある立ち姿の遊女像。平安朝末期の妙の君が、慶長風俗では、どうも。
阪急電車で、神戸へ。
「何時?」「三時ですよもう」「やあ、江口で時間をとりすぎた」「神戸の史蹟、まわれますかなあ」