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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

それを充分考慮に入れても、平家の人々とて、人間である以上、一門西海のもくずになったというような、粗雑な歴史観は、ぼくには想像できないのだ。生きうるかぎり、あくまで生きぬこうとしたに違いないと思う。元暦二年三月二十四日の長門壇ノ浦までを、平家時代とし、すぐ翌日から源氏の鎌倉時代とページを更えるような史学的整頓はおかしなものである。そう総決算をつけてしまえば、一応、次の時代を説くのに、都合はよいが、歴史を、社会構成の表皮だけから見ずに、人間の生命を基底としての社会を観るなら、屋島、壇ノ浦は、決して平家の消滅ではないのである。ただ、その生態を、社会の表面から変えたというだけに過ぎない。

平家一門は、死に絶えていない。多くは、生きつらぬいて、どこかで生きつづけた。これは、ぼくの日ごろに抱いている考えであったが、屋島の一角に佇んで、一そうその考え方をつよめた。

夕月はいつか五剣山の上に高い。船隠しの崎も、檀ノ浦の浦曲も、夜の底に無風帯の青ぐろさを抱いたまま暮れ沈んでいる。もし、かりに今夜を平家最後の夜として、ここを落ちるとしたら? ――と考えてみよう。それはじつに易々たるものだ。