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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
――そして両軍の中の切支丹武士は、一堂に集まって、敵味方もなく、杯をあげて、談笑したり、夜もすがら仲よく遊んで、次の日には、また戦った。
この厳島見物にも来ている宣教師フロイスは、そのときの目撃を「……両軍ニ属スル武士約七十名ハ、忠誠、愛情、平和、一致ノ美徳ヲ示シテ、敵味方サナガラ一堂ノ家臣ノゴトキ友愛ト礼儀ヲ以テ語リ会ツタ」と、本国への書簡“日本通信”に記載している。
このクリスマス休戦は、もちろん堺の宣教師が、両軍中の切支丹武士に呼びかけて、あっせんの労をとったものであろうが、厳島合戦のばあいは、純然たる武門同士の協約であった。合戦の様相は、猛烈を極め、陸戦海戦の果て、陶晴賢は敗れて、数日の後に自刃している。
日ごろに、厳島の美と価値とが、彼ら武人にも、正しく映じていたことがわかる。一瞬の興亡儚いものの価値と、永遠なものの価値との、優劣をよく知っていた。ただ、敬神というだけのものではない。この地上への大きな愛情でもある。
朝鮮の三十八度線は、まだ酸鼻をきわめて戦われていたころだったし、ぼくは今、国宝館を出て、御手洗川の渓流に沿って、裏の山道へと、みんなと一しょに、夕闇を喘ぎ登って行きながら――いつまでも、古今の戦争様相のちがいが、頭から消え去らない。